規模の経済ってなに? コストが下がるメカニズムをわかりやすく解説。

経済学

「規模の経済」って言葉は聞いたことはあるけど、詳しい意味はわからない。調べてみたけどよくわからなかった。前に習ったけど忘れてしまった。そんな方にも理解できるようにわかりやすく解説していきます。

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規模の経済とは

規模の経済とは経済学の概念で、各種コストと生産量の変化についてを指していて、特に事業の拡大や生産量の増加に伴い、製品一つあたりのコストが下がる原理や効果、現象のことを指します。

製品を一つ作った場合と、同じ製品を百万個作った場合では、その平均費用は後者の方が小さくなります。つまり大量生産をすることによって平均単価が下がるのです。これを「規模の経済が働く」と言います。

規模の経済には二つの大事な法則が関わっています。それは以下にご紹介する「限界費用逓減の法則」と「収穫逓減の法則」です。一つずつ見ていきましょう。

限界費用逓減の法則(収穫逓増の法則)

経済学でいう「限界」とは「limit」のことではなく、「marginal」のことを指します。marginalには「周辺的な、僅かな、欄外の」という意味があり、限界は「ある状態に、微少量を追加したらどう変化するか」という概念です。わかりやすくいうと「追加分」という意味です。

つまり限界費用とは、「追加分の費用」という意味で、それが逓減、すなわち少しずつ減っていくのが限界費用逓減の法則です。

生産量を100から101に変えた時、追加分の一個の費用はそれまでの平均費用より安く済み、そこからさらに一つ増やす場合はもっと安くなる、という法則です。

この仕組みには固定費用が大きく関わっています。

例えば大福を生産しようと思う場合、そのためにはまず土地を買ってそこに工場を建てて、さらに機械を設置しなければなりません。しかしそれらは一度買ってしまえばもう自分の物になるので、維持費などを除いて、支払いは初めの一回だけです。この初期投資のことを固定費用と呼びます。生産量を増やすと連動して増える光熱費や材料費は変動費用です。

100円の大福を一万個売った場合の売上は100万円。固定費用を5000万とすると、大福一個あたりの生産コストは5000÷100で50円となります。(簡略化のために変動費用は考えないものとする)

生産量を増やし、10万個売った場合の売上は1000万円。固定費用は同じなので、一個あたりのコストは5000÷1000で5円となります。

50円から5円なので、平均費用はグッと下がりました。この生産量増加に伴う固定費用の拡散による平均単価の下降が、限界費用逓減の法則の仕組みです。

収穫逓減の法則

限界費用逓減の法則によって、生産量を増やしていけば利益が伸びるようになりますが、その伸びしろ(利益率、収穫)は減っていき、もしろマイナスになることさえあります。これを収穫逓減の法則と呼びます。

元々は農業に関する理論で、収穫量を増やすためには耕作面積を増やすか、機械や労働力を投資して効率を上げるかの選択肢がありますが、収穫逓減の法則はそのどちらも費用対効果が薄くなっていくことを説明しています。

畑を増やすにしても土地には肥沃度のバラつきがあり、徐々に痩せた土地を耕していくことになります。また、一つの畑の収穫量を増やすために肥料をたくさん使ったりトラクターを導入したりすれば、初めのうちは利率は上がりますが、途中からは飽和状態になり収穫量は頭打ちになります。小さな畑にトラクター1000台があっても仕方ないですよね。

これは他の産業にも言えることで、資本や労働力の投資によって利益が伸びるのは初めのうちだけで、徐々にその効果は薄くなっていきます。

つまり、限界費用逓減の法則が規模の経済を後押しするのに対して、収穫逓減の法則は抑止力として働きます。

また、供給を増やしても消費者側には限界効用逓減の法則が働くので、その面でも生産過多は悪い影響を及ぼします。

規模の不経済

規模の不経済とは、事業の拡大や生産量の増加に伴い、製品一つあたりのコストが上がる原理や効果、現象のことを指します。ちょうど規模の経済と逆の意味です。

企業が大きくなると内部連絡が滞ったり、組織が複雑になったりして、生産性が落ちてしまうこともあります。

また、規模の経済は製品が全て売れた場合を想定していて、商品が売れ残ったりなどしたら規模の経済は十分には働きません。例えばコンビニやチューン店などの企業が支店を増やして全国展開したとします。けれど各地方では売り上げが伸びず、維持管理費や人件費、光熱費が嵩んでしまい店を畳むことになってしまいました。この場合は規模の不経済が働いたと言えます。

市場の失敗「独占・寡占」

規模の経済が働くと、資金が潤沢な企業は大量生産によってさらに利益を伸ばすことができ、得た利益で追加投資をしてまた限界費用を逓減させるサイクルを回すことができます。

するとその産業では一部の大企業が市場を支配することになり、独占や寡占に繋がります。

企業規模が十分に大きくなると、今度は収穫逓減の法則が働いてしまうので、企業は商品の価格を上げて供給量を調整するインセンティブを持つようになります。一部の企業が市場を支配する不完全競争市場では、その企業が価格を決定できるので、一般に価格は高くなります。

独占・寡占市場で企業がどのような価格を決定するかはゲーム理論を使って分析します。企業が最適な判断をした状態をナッシュ均衡と呼びます。

まとめ

・規模の経済は「限界費用逓減の法則」「収穫逓減の法則」に基づいて、生産量を増やすと平均費用が下がる原理。

・実際には商品の売れ残りや社内の風通しの悪化などが起こりうるので、生産量の増加は損失を発生させる場合もある(規模の不経済)。

・規模の経済は独占が進めるので、市場の失敗の要因の一つ。

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