外部性とは? 意味や具体例をわかりやすく解説。

経済学

「とばっちり」や「棚から牡丹餅」など、誰かが何か行動を起こしたときに、その判断や行為が他の誰かに影響を及ぼすことを表した言葉はいくつかあります。

経済学用語の「外部性」もその一つです。

この記事では外部性について簡単に解説していきます。

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外部性とは

外部性とは、ある経済主体の行動が他の経済主体に影響を及ぼすことです。

経済学が仮定する誰かの意思決定や行動は、一般的にはその人だけで完結していて他者には影響しないのですが、現実ではそうもいきません。

例えばマンション住まいのAさんがギターを買って練習するとします。けれどAさんの家の壁は薄いので、夜中に弾くと近所迷惑になってしまいます。

これが外部性です。「騒音」と言う他者の生活に侵入する影響が発生しているので、Aさんの行動には外部性があります。

これは個人に限らずもっと大きな組織にも言えることです。

例えば空港や軍事基地なども、飛行機などの轟音を響かせてしまうために外部性があります。このようなマイナスの影響を与える外部性のことを負の外部性、あるいは外部不経済と呼びます。

反対に、プラスの影響を与える外部性のことを正の外部性、あるいは外部経済と呼びます。

外部性は市場の失敗の要因の一つです。

外部性が働くと市場の価格調整メカニズムがうまく機能せず、経済全体の便益に損失を発生させてしまうとされています。

市場の失敗に関しては以下の記事をご覧ください。

正の外部性・外部経済

正の外部性とはプラスの影響を与える外部性のことです。

プラスであれば経済に良い効果がありそうと思えるかもしれませんが、正の外部性にはフリーライダー問題というデメリットが存在します。

フリーライダーとは「無賃乗車する人」のことで、転じて「対価を払わずに利益だけを得る人」のことを指します。

対価を払わなくていいならみんなそうしたいと思うようになるため、結果として購買意欲や労働意欲の低下に繋がります。

例1 京都の神社仏閣

京都には歴史ある神社やお寺が数多く残存し、日本の観光名所の一つとなっています。

京都を訪れる観光客は金閣寺や清水寺などを巡りますが、入館料などを払う以外にも、その旅行の色々な場面でたくさんの消費をします。

ホテルや旅館に泊まったり、タクシーやバスを乗り継いだり、お土産を買ったり。

神社仏閣の存在が地域に潤いをもたらしているので、これは正の外部性が働いていると言えます。

建造物の所有者には維持費がかかりますが、地域は対価を払わずに恩恵を授かることができます。なので所有者には建物を取り壊すインセンティブがあるのですが、それをすると地域経済が悪化してしまいます。

そのため、(歴史的遺産の保全の意味もありますが)政府が神社仏閣を援助する必要があるのです。

例2 養蜂家と果樹栽培農家

これはよく外部経済の例に出される組み合わせです。

ハチミツを作る養蜂家と果物を作る果樹栽培農家が隣接して営んでいるとします。

すると養蜂家の飼育するミツバチが果樹の受粉を促してくれるため、果樹栽培農家は対価を払うことなく果樹の生産効率を上げることができます。

そのため、養蜂家と果樹栽培農家の関係には正の外部性が働いていると言えます。

負の外部性・外部不経済

負の外部性とはマイナスの影響を与える外部性のことです。

有名なものに公害があります。工場が垂れ流す廃棄物が環境を汚染し、それが近隣地域に有害な影響を与えてしまった場合、その工場の稼働には負の外部性が働いています。

これを抑えるための政策がピグー税と呼ばれる税金で、企業の生産に課税することで汚染を軽減する役割があります。

例1 観光公害

歴史的建造物を訪れる観光客の増加によって、京都には正の外部性が働いていると上記で説明しましたが、実はそれと同時に負の外部性も働いています。

観光客全員のマナーが良ければいいのですが、実際はマナーが良い人ばかりではありません。

観光業が盛んになるとゴミのポイ捨てや渋滞、違法駐車など、景観・治安の悪化が懸念されます。

例2 新型コロナウイルス

通勤通学、外食、買い物、映画館、旅行。

昨今では外出は新型コロナウイルスの感染拡大という負の側面を抱えています。

感染を拡大させる意図はなくても、外出をして人と会ったりすれば否応なくリスクは発生します。各経済主体の行動が感染拡大という悪影響を及ぼしているため外部不経済が働いています。

感染を防止するためのアルコール消毒液、マスク、営業時間短縮などは、ピグー税と同じようなコストと言えます。

また、観光同様にコロナについても視点を変えると在宅勤務による効率化、余暇時間の増加など、正の外部性が働いているとも言えます。

まとめ

要点
  • 外部性とは誰かの行動が別の誰かに影響すること。
  • 正の外部性はプラスの影響。
  • 負の外部性はマイナスの影響。

フリーライダー問題やピグー税などは日常生活にも転用できます。

部屋でギターを練習したいのであれば「日中にする」「カポをつける」などの制限を設けることで、お隣さん同士妥協して便益を確保することができます。給料泥棒が発生するような職場環境であれば、努力に応じたボーナスを支払うことで解決できます。

外部性について考えることで、日々の満足度が上がるかもしれません。

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