ギリシャ神話の成り立ち
ホメロスによって英雄の物語が紀元前9〜8世紀ごろに記述され、紀元前8〜7世紀ごろにヘシオドスによってその前日譚である神々の物語が記述されます。
- ホメロス著「イリアス」「オデュッセイア」→英雄の物語
- ヘシオドス著「神統記」→神々の物語
この二つの物語はギリシャ神話として後世まで語り継がれることになりました。当時はインターネットなんてない時代ですから、伝承の中でギリシャ神話には多くの説が生まれることになり、見解が完全に一致しないことも多々あります。
ギリシャ神話はローマ神話との融合を経た後、キリスト教との不和により日陰に追いやられます。しかし15世紀にイタリアのルネッサンス(文芸復興)によって絵画が自由に描かれるようになり、特にメディチ家がボッティチェリに描かせた「ヴィーナスの誕生」を筆頭に再び脚光を浴びるようになりました。

この記事では英雄の物語に焦点を当てて、大まかなあらすじを紹介していきます。
時代背景「トロイア戦争」
トロイア戦争とは神話上の大戦のことです。神王ゼウスが「増えすぎた人口の調整」を決意したことに端を発します。
ヘラ、アテネ、アフロディーテの3女神は、誰が一番美しいかをトロイアの王子パリスに委ねました。3女神はそれぞれ賄賂として、自分が選ばれたら「世界征服」「最強の武力」「絶世の美女」を贈ることを約束します。
若きパリスは愛を求め、アフロディーテを選びます。そして約束通り、アフロディーテの力を借りて、スパルタ王であるメネラオスの妃・ヘレネーを奪い去りました。
メネラオスは兄でありミケーネ王のアガメムノンにこれを告げて、オデュッセウスとともにトロイアまで行って引き渡しを求めましたが、トロイアはこれを拒否しました。
そうして、ヘレネー奪還のため、ここにギリシャ連合軍(アカイア軍)vsトロイア軍の、十年に渡るトロイア戦争が勃発しました。
イリアス
- アキレウス 主人公。半神半人の英雄。
- アガメムノン ギリシャ連合軍の総大将。強欲な王様。
- オデュッセウス ギリシャ側の智将。「オデュッセイア」の主人公。
- パトロクロス アキレウスの親友。
- ヘクトル トロイアの王子にして、軍の総大将。
- パリス 物語の発端。ヘクトルの弟。
- プリアモス トロイアの王。ヘクトルとパリスの父。
あらすじ
アカイア軍の総大将アガメムノンと、英雄アキレウスが捕虜の娘を巡って仲違いし、アキレウスは戦線を離脱しました。しかしアキレウスなくして戦線の維持は難しく、アカイア軍はトロイア軍に押されてしまいます。アガメムノンは何とかアキレウスに戻ってきてもらうように懇願しますが、アキレウスはこれを拒絶しました。
そこでアキレウスの親友であるパトロクロスが、アキレウスにある相談を持ちかけます。
「戦場に戻ってくれなくてもいいから、お前の装備を貸してくれ。俺がお前のフリをする。アキレウスがいると思わせるだけで味方の士気は高まるし、敵は恐れ慄く。だから武器も防具も俺に貸してくれ」
アキレウスはこれを了承し、装備を貸し与えます。しかしアキレウスのフリをしたパトロクロスはトロイア軍の総大将ヘクトルに討ち取られてしまいました。アキレウスはこれに激怒し、友の仇を討つべく戦場に戻ります。
アキレウスの奮戦甚だしく、戦況を瞬く間に巻き返しました。さらに智将オデュッセウスが一計を案じます。かの有名な「トロイの木馬」です。アキレウスを筆頭とするアカイアの精鋭部隊が巨大木馬に潜み、トロイア城内への侵入に成功します。アキレウスはヘクトルを一騎打ちで敗り、アカイア軍は勝利を収めました。
トロイア王プリアモスは、息子ヘクトルの遺体を引き渡してもらうため、アキレウスの元を訪れます。
二人は互いにパトロクロス、ヘクトルの死を悼み、ヘクトルの遺体は返還されました。
オデュッセイア
- オデュッセウス 主人公。頭が切れ、武勇も併せ持つ。
- アテネ 女神。オデュッセウスたちを気にかけ、未来へと導く。
- テレコマス オデュッセウスの息子。母を助けるため、父を探す。
- ペネロペイア オデュッセウスの妻。40人の無法者に求婚され困り果てている。
あらすじ
トロイア攻略から10年。
漂流したオデュッセウスは、妖精カリュプソに気に入られ、漂着した孤島に7年間監禁されていました。女神アテネは彼を気の毒に思い、神王ゼウスに彼をカリュプソから解放することを請願。そして変装した姿でオデュッセウスの故郷イタケーへと向かいます。
オデュッセウスの屋敷には、主人がいないのをいいことに40人の無法者が押しかけて、財産を奪ったり、家畜を食べたり、オデュッセウスの妻ペネロペイアに求婚したりと、好き勝手にしていました。アテネは息子テレコマスを激励し、父を探す旅に出させます。
テレマコスはトロイア戦争の英雄たちを訪ねて回り、オデュッセウスが海神ポセイドンの怒りを買って漂流し、カリュプソの島に捕らわれていることを知りました。
一方、神々はオデュッセウスを帰国させることを決定し、カリュプソも渋々これを受け入れます。しかし決議に参加していなかったポセイドンはこれに激怒し、天変地異を起こします。それでもオデュッセウスはアテネの力を借りて何とか海を渡りきることができました。
辿り着いたのはパイアケス人の住む島で、オデュッセウスはパイアケス人の王アルキノオスや、王女ナウシカアに歓迎されます。宴が催され、そこで彼はトロイア戦争終結からこれまでに何があったのかを彼らに語りました。
人を喰らう一つ目の巨人・キュクロプスとの死闘。 男を豚に変える魔女キルケとの遭遇。 冥界訪問、亡き戦友たちとの再開。 セイレーンやスキュラなどの怪物からの逃走。 太陽神ヘリオスの怒り。 苦難に満ちた冒険を経て、そして漂流。冒険の中で仲間を全て失い、一人生き残ったオデュッセウスはカリュプソの島へと流れ着いた……。
パイアケス人たちは船でオデュッセウスを送り出します。
ついに故郷イタケーに帰還したオデュッセウスは、女神アテネから無法者たちのことを聞くと、魔法で老人へと姿を変えてもらい、自分だとバレないように家族の待つ屋敷へと向かいました。その途中、帰還したテレコマスと出会い、オデュッセウスは正体を明かして再会を喜びます。
老人に扮したオデュッセウスは、屋敷にたどり着くと無法者たちに物乞いをしましたが、彼らはそれに取り合いません。オデュッセウスは彼らの薄情な態度を確かめ、知恵を巡らします。屋敷中の扉の鍵を閉め、全ての武器を隠した後、女神アテネの計らいで始まったペネロペイアを巡る無法者たちの弓の腕比べに、オデュッセウスも参加します。
無法者たちはかつてオデュッセウスが使っていた大弓を構えることもできませんでしたが、最後に大弓が手元に渡ってきた老人は、いとも容易く矢を番え、全ての的を射抜きます。そして正体を明かしたオデュッセウスはテレコマスとともに、武器もなく屋敷に閉じ込められた無法者たちを殺していき、ついには全滅させました。
長い苦難の旅路を経て、家族は再会を果たしたのでした。
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まとめ
- アガメムノンとアキレウスが対立し、アキレウスは戦線を離脱。
- アキレウスのフリをしてパトロクロスが指揮を取るが、返り討ちにあう。
- アキレウスがパトロクロスの敵討ちのためヘクトルと一騎討ちをして勝利する。
- オデュッセウスがトロイア戦争から帰還しようとするが、遭難してしまう。
- オデュッセウスは知恵を絞って魔女や怪物との戦いをくぐり抜けてなんとか家に戻る。
- 妻に強引に言い寄る無法者たちを、息子のテレコマスとともに叩きのめす。