財にはいろいろな分類があります。
所得が増えればたくさん買うようになるもの、所得が増えれば買わなくなるもの。価格が上がれば買わなくなるもの、逆に価格が上がれば買うようになるものまで……。
この記事では財の分類についてわかりやすく解説していきます。
上級財
上級財とは、所得が増加したときに、需要も増加する財のことです。経済的余裕ができたときに、もっと買いたいと思える財を上級財、または正常財と呼びます。
ex)お肉、宝石、漫画、ゲーム、ブランド商品、タクシー、新幹線、……
スマホゲームなどでガチャを引くときに、その交換券である魔石を買うための課金額は、所得が増えれば増加します。今まで我慢していた分の需要が解放されるからです。
二財モデルではこのように変動します。

X軸=X財の数量、Y軸=Y財の数量 M=所得、Px=X財の価格、Py=Y財の価格、E=最適消費点 M’=変動後の所得、E’=変動後の最適消費点
所得Mが増加した場合、M/Px(X財を購入できる数量)は、分子が増大するため右方向にシフトします。同様に、M/Py(Y財を購入できる数量)も上方向にシフトします。x切片とy切片の値は、同じ比率だけ変わるため、予算制約線は平行に移動することになります。つまり、所得変動前後の予算制約線の傾きは同じになります。
所得が増加した場合は予算制約線は右上にスライドし、より満足度の高い無差別曲線に接することができるので、上級財の最適消費点も右上に移動します。
下級財とは
下級財とは、所得が増加したときに、需要が減少する財のことです。経済的余裕ができたときに、欲しくなくなる財を下級財、または劣等財と呼びます。
ex)安い化粧品、中古品、型落ち商品、バス、……
今までお金がないからしぶしぶ深夜バスに乗っていた人は、お金さえあれば新幹線で旅行するようになるし、お金がないから中古のギターで演奏していた人は、お金さえあれば良いギターを買うようになります。これらのような場合における「深夜バス」や「中古ギター」が下級財に当てはまります。
二財モデルではこのように変動します。

X軸=X財の数量、Y軸=Y財の数量 M=所得、Px=X財の価格、Py=Y財の価格、E=最適消費点 M’=変動後の所得、E’=変動後の最適消費点
所得Mが増加した場合、M/Px(X財を購入できる数量)は、分子が増大するため右方向にシフトします。同様に、M/Py(Y財を購入できる数量)も上方向にシフトします。x切片とy切片の値は、同じ比率だけ変わるため、予算制約線は平行に移動することになります。つまり、所得変動前後の予算制約線の傾きは同じになります。
EとE’のY座標(Y財の数量)を比べると、E’ではその値が減少しています。その代わりにX座標の値は飛躍的に増加しています。このような増減が確認される場合、Y財は下級財であり、X財は上級財であることがわかります。
Y財が高速バスで、X財が新幹線としたときなどに、最適消費点はこのように変動します。
ギッフェン財とは
ギッフェン財は下級財に含まれる財です。下級財の中でも所得効果が代替効果よりも大きくて、価格低下により需要が低下する財をギッフェン財と呼びます。
まずは所得効果と代替効果について解説していきます。
所得効果
所得効果とは、実質的に所得が増えたときに需要が変化する現象のことです。
「実質的に所得が増えたとき」とは、単純に収入が増えたことによって所得が増加する場合と、財の価格が低下することによって相対的に所得が増加する場合の両方を指します。実質所得が増えた場合、つまり経済的に余裕が生まれれば、基本的に財の需要は増加しますが、上で説明したように下級財の場合は減少します。
代替効果
代替効果とは、ある財の価格が変化したときに、それに伴って諸財の需要が変化する現象のことです。
例えばバターの価格が上昇した場合に、その代わりとしてマーガリンを購入するとすると、マーガリンの需要量はバターの価格の変化によって変動したことになりますこのように一方の価格の変化が他方の需要に影響を与える効果を代替効果を呼びます。
一方の価格が上昇(下降)すると、もう片方の価格は相対的に下降(上昇)したことになり、それぞれの財への需要が変化します。基本的に安い方へ需要は流れていきます。
価格効果
価格効果とは所得効果と代替効果を合計したものです。ギッフェン財は価格効果が負の財であると言い換えることができます。

X軸=X財の数量、Y軸=Y財の数量 M=所得、Px=X財の価格、Py=Y財の価格、E=最適消費点 Px’=X財の低下後の価格、M’=X財の価格低下により節約した所得 E’=代替後の最適消費点 E’’=最終的な最適消費点
X財の価格が低下すると、それまでと同じ効用を得るために必要な所得は少なくなります。なぜならX財の消費率を上げれば、効率よく効用を獲得できるからです。このY財とX財の相対的な価格の差による需要の変化が代替効果です。
グラフ上では各値は次のように変化しています。PxはPx’に下落。節約できたことによって所得はMからM’に下降。M’/Py(Y財を購入できる)とM’/Px’(Y財を購入できる数量)がそれぞれ変化したことによって予算制約線の傾きも変化。代替効果の結果、最適消費点はEからE’に移ります。
節約できた分お金が余ったわけですが、二財モデルではお金は使い切ることが大前提です。余った所得も全て使うと、M’がMに戻るので、予算制約線は右上に平行移動します。
その結果、最適消費点はE’からE”に移ります。この移動が所得効果です。
二つの効果を合算したEからE’’への移動を価格効果、または全部効果と呼びます。

さて、ここでX財の数量について見てみます。
EからE’(代替効果)では増加していますが、E’からE’’(所得効果)では減少しています。EからE’’(価格効果)は減少なので、所得効果が代替効果を上回っています。
つまりX財は価格を低下したにも関わらず、需要が減少したことになります。これがギッフェン財です。
しかし、価格が下がっても需要が増えず、価格が上がれば需要が増える、そんな財が本当にあるのでしょうか?
有名な例としては19世紀のアイルランドで飢饉が起きた際のジャガイモがギッフェン財の候補としてよく挙げられます。
当時ジャガイモは貧困層の主食であり、ジャガイモ飢饉によってその価格が上昇すると、家計を圧迫するようになりました。ジャガイモの他に主食になりうるものは何もないし、贅沢品であるお肉などの消費は今までよりも抑えなければいけません。その結果、消費におけるジャガイモの割合が増えるので、価格が上がったとしてもジャガイモの消費量が増えることになりました。
高くなったところで生きるためには結局買うしかない。しかもそれが家計を圧迫するので贅沢してる暇などなく、割合を増やすしかない。この条件が揃っていたので、価格の上昇が需要の増加に繋がるという稀有な状況が発生したのです。
違い
・上級財 所得が増えれば需要も増える。安くなれば需要は増える。所得効果も代替効果も「正」なので価格効果も「正」。
・下級財 所得が増えれば需要は減る。安くなれば需要は増える。所得効果は「負」、代替効果は「正」。所得効果が代替効果を上回り、価格効果が「負」になるものをギッフェン財と呼ぶ。