「因果関係」と「相関関係」の違いは?意味や使い分けをわかりやすく解説!

似ている言葉の違い

「適度にお酒を飲む人ほど寿命が長い」

このような俗説を耳にしたことはありませんか?一見お酒の効能を支持する主張ですが、そもそも適度にお酒を飲めるということは、それだけの金銭的な余裕があることに起因しています。つまりこの主張には「財力」という第三要因が欠落しています。

このように、二つの事象には因果性がないにもかかわらず、あたかも因果関係であるかのように錯誤してしまう現象を疑似相関と呼びます。

この記事では疑似相関に惑わされないように、「因果関係」と「相関関係」の違いについて詳しく解説していきます。

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「相関関係」とは

「相関関係」とは、要素同士が連動して変化する関係のことを言います。片方の要素が変化すると、それに合わせてもう片方の要素も変化します。

Aが増加した場合にBも増加するのなら「AB間には正の相関がある」と言い、Aが増加した場合にBは減少するのなら「AB間には負の相関がある」と言います。

注意点としては、相関関係は要素同士が誤差のない完璧な連動をすることを含意しているわけではないということです。相関関係は、統計的に連動している傾向が認められる関係のことを指しています。

数学において相関の度合いは、相関係数として定量的に表されます。相関の度合いが強くなる、つまり相関係数が1or -1に近づくと、バラつきが纏っていき、やがて線形関係に行き着きます。相関の度合いが弱くなる、つまり0に近づくと、バラつきが大きくなり、やがて無相関となります。

特徴的な相関関係
  • 線形関係
    各点のバラつきが完全になくなり、グラフが直線で表される関係のことです。代表的なものに「比例関係」があります。
  • 因果関係
    各要素間に因果性が認められる関係のことです。以下で詳しく解説していきます。

「因果関係」とは

「因果関係」とは、要素同士が原因と結果である関係を言います。片方の要素が原因となって、もう片方の要素を生起します。

一方の要素が原因で、もう一方の要素が結果であると厳密に定義できる時、関係性を示す矢印は一方通行になります。このような関係性を関数で表す場合、原因となる要素が独立変数で、結果となる要素が従属変数になります。

従属変数・独立変数とは?

「y=ax」において、「y」が従属変数であり「x」が独立変数です。独立変数xの値が先に定まることによって、従属変数yの値は定まります。

関係性を示す矢印が双方向である場合は、従属変数と独立変数に代入する要素を入れ替えることができます。

因果関係が成立する条件
  • 共変性
    前提として、複数の要素に共変関係(相関関係)が認められている必要があります。共変とは文字通り「共に変わる」という意味で、連動していることを表します。つまり、与えられた要素群は「一方が変化した場合にもう一方も変化する要素同士の集合である」ということです。
  • 依存性
    依存性(因果性)とは、一方の要素の変化が、もう一方の要素の変化に依存している性質のことです。つまり、要素のそれぞれが独立した事象ではなく、影響を及ぼす関係であることを表します。
  • 時間的先行性
    原因となる事象は、必ず結果に先行して起こります。原因が結果を引き起こすので、時間軸上では「原因」→「結果」という順序で物事は進みます。結果が原因よりも先に生じることはありません。
  • 完全性
    完全性とは、それぞれの要素を引き起こす第三要因が存在せず、関係が完結していることを言います。情報が出揃っていて、各要素を左右する他の可能性が排除されている状態を指します。
因果関係の種類
  • 直接的関係
    直接的関係では、ある要素Aが別の要素Bを生起します。原因が結果を直接的に引き起こす関係のことを言います。
    「A→B」
  • 間接的関係
    間接的関係では、ある要素Aが別の要素Zを生起するまでに、他の要素(C,D,…)を媒介します。直接的関係が連鎖することで、原因が結果を間接的に引き起こす関係のことを言います。
    「A→B→C→・・・→Z」
  • 共依存関係
    共依存関係では、ある要素Aと別の要素Bが、互いに生起し合います。原因が結果を引き起こす一方で、その逆も成り立つため、双方向に影響し合う関係のことを言います。
    「A⇄B」

「因果関係」「相関関係」の違い・使い分け

  • 「相関関係」:要素同士が連動して変化する関係
  • 「因果関係」:要素同士が原因と結果である関係

因果関係は相関関係であることの十分条件であり、相関関係は因果関係であることの必要条件です。

つまり因果関係は相関関係の一種です。「依存性」「時間的先行性」「完全性」を併せ持つ相関関係のことを因果関係と呼びます。

特に「依存性」は因果律の最も特徴的な条件です。相関関係において、各要素は互いに影響を及ぼすとは限りません。しかし因果関係においては要素間に強い影響力が働き、各要素の変動は別の要素の変動に依存しています。

それに加えて、原因と結果の前提である「時間的先行性」、必要な要素が網羅されている「完全性」も確かめることで、因果関係であるかどうかを判断することができます。

疑似相関・因果関係の例

アイスクリームの売り上げが高い日ほど溺死者も多い

「アイスクリームの売り上げが高い日ほど溺死者も多い」という命題について検討していきます。比較されている要素は以下の二つです。

  • アイスクリームの売り上げ
  • 溺死者数

まず、アイスクリームの売り上げが伸びる要因には「価格低下」「広告宣伝」「気温の上昇」などが挙げられます。
次に溺死者数の増減要因については「津波災害」「海水浴シーズン」「船旅の増加」などが挙げられます。このうち「海水浴シーズン」に関しては、季節が夏である、つまり「気温の上昇」が要因となっています。

従って、「気温の上昇」は「アイスクリームの売り上げ」と「溺死者数」の両方の共通要因であることがわかります。
命題には「気温の上昇」という第三要因が欠けていて、「完全性」の条件が満たされていません。よって因果関係は成立せず、「アイスクリームの売り上げ」と「溺死者数」の間には依存性もありません。

足が大きい人ほど目が悪い

「足が大きい人ほど目が悪い」という命題について検討していきます。比較されている要素は以下の二つです。

  • 足の大きさ
  • 視力

「足の大きさ」と「視力」には一見何の関わりもありませんが、「アイスクリームと溺死者」の例と同様に、それぞれの変動には共通要因があります。それは「成長」です。一般的に成長するにつれて足は大きくなり、視力は落ちていきます。

やはり「完全性」が満たされていないので、「足の大きさ」と「視力」には因果関係は成立しません。

学歴と地頭の良さは比例しない

「学歴と地頭の良さは比例しない」という命題について検討していきます。比較されている要素は以下の二つです。

  • 学歴
  • IQ

学歴とIQは必ず対応しているわけではありません。学歴が高くてもIQが低い人もいれば、学歴は低くてもIQが高い人もいます。つまり、完全に比例しているわけではありません。従って命題は真であると言えます。

では無関係なのかというと、そうでもありません。

学歴が高いということは、英語や数学などの各科目において優秀であることを意味します。
各科目において優秀な人物は、記憶力が優れている(暗記科目)、論理的に思考できる(数学)、読解力がある(国語)と言った能力を持っている可能性が高いです。
よって「学歴が高い人ほど、そうでない人に比べて、IQも高い傾向がある」という結果が導かれます。

つまり、学歴とIQには正の相関があり、「依存性」が満たされていることが示されます。よって「IQ」が原因で「学歴」が結果の因果関係が成り立ちます。

鶏が先か、卵が先か

「鶏が先か、卵が先か」という命題について検討していきます。比較されている要素は以下の二つです。

鶏が存在するためには卵が必要不可欠であり、卵が存在するためには鶏が必要不可欠です。両者の間には双方向の因果性が認められ、共依存の因果関係が成り立っています。

「鶏が先か、卵が先か」とは、ひいては世界や宇宙の起源を追求する因果性のジレンマです。一般的には循環する原因と結果の発端を求める無益さを説く教養的な言い回しとして使用されます。

この命題を言い換えれば、「AがBから生起し、BはAから生起する時、AとBはどちらが先に生じたのか?」となり、物理学・生物学・哲学・神学などの各分野から解決が試みられています。

まとめ

  • 「相関関係」:要素同士が連動して変化する関係
  • 「因果関係」:要素同士が原因と結果である関係

「相関関係」に「依存性・時間的先行性・完全性」の条件を加えたものが「因果関係」となります。

これらの条件に照らし合わせることによって、与えられたデータが疑似相関なのか因果関係なのかを見破ることができます。

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