「十分」とは
「十分」とは、「物事が満ち足りていて、不足や欠点がない状態」を表します。「ある要求に対して、それに応じるための必要な量が集まっている」という意味です。
本来「十分」とは完全な状態を指すのですが、日常会話における「十分」にはしばしば「最低限満たしている」というニュアンスが含まれます。例えば「無人島で1週間生き残るための十分な量の食料を確保した」と言った場合、「毎日3食お腹いっぱいに食べれる量ではないが、少なくとも飢えに苦しむことはない量」という意味合いになります。
反対に、派生後である「十二分」は「最大限、限界突破」というニュアンスを持ちます。能力を遺憾無く発揮したり、機会を思う存分活用したりと、物事が完全な、または飽和している状態を表します。
例文
- 旅に出るための十分な量の金貨を手に入れた。
- A大学に合格するためには、テストを70%解ければ十分である。
- 彼は遊園地を十分に堪能した。
- 猫は動物であることの十分条件である。
関連語
- 満足
- 十二分
- 存分
- フル
- 申し分ない
「充分」とは
「充分」は、基本的に「十分」と全く同じ意味を持ちます。つまり「物事が満ち足りていて、不足や欠点がない状態」を表します。漢字が違うだけで、同じ内容を指します。
「充分」が比較的よく使用される状況は、数値で表せない精神的な満足感などを評価する場合です。
感情が満たされている場合などに「充分」と表現します。
例文
- 人の往来を眺めるのは退屈しのぎには充分だった。
- ふらりと入った定食屋の料理は充分美味しかった。
- 話題の映画を見てみたが、充分感激した。
- もう充分です。おかわりは要りません。
同義語
- 十分
「充分」は十分と全く同じ意味なので、関連語も「十分」のものと同じになります。
「十分」「充分」の違い・使い分け
「十分」「充分」は、辞書的な意味では同義語なので、区別する必要はありません。ただし、公的文書などで使用できるのは「十分」だけなので、基本的には「十分」を使うのが望ましいです。
使い分け
世間の俗説では以下のように区別されることがあります。
- 十分:客観的・定量的
- 充分:主観的・定性的
あくまでも俗説なので、公式な定義や明確な根拠があるわけではないので注意が必要です。「充分」は確かに主観的・定性的な充足感を示すのに多用されますが、「十分」も同じ内容を指し示すことができます。基本的に「十分」の方が扱える範囲が広いので、悩ましい場合には「十分」を使えば問題ありません。
「10分」との区別
「十分」よりも「充分」を使用した方が好ましい例として、「10分との区別」があります。充足度を示す「十分」は時間を表す「10分」と漢字表記が同じため、時に混同される場合があります。以下のような場合を見てみましょう。
- カップ麺にお湯を注いでから十分時間が経った。
- パズルを解くのは十分で十分だった。
- 彼の腕は短いため七分袖で十分袖が足りた。
1の文章は10分間時間が経過したのか、麺がふやけるのに必要な時間が経過したのか、文章だけでは判別できません。
2,3の文章は内容を読み解くことはできますが、一見紛らわしいです。さらに複雑な文章になれば読解も困難になっていきます。
このような場合に、「十分」ではなく「充分」を使用することによって、時間ではなく満足度を表しているのだとを強調することができます。