「おざなり」と「なおざり」は、どちらも「いい加減にする」という意味を持ち、表記も似通っているため、区別が紛らわしい言葉です。
ただ、意味も発音もよく似た言葉ですが、その語源は全く別です。そのため意味にも違いが生じます。
この記事では、「おざなり」と「なおざり」の意味や使い方を解説し、両者を比較していきます。二つの似通った言葉の違いを確認していきましょう。
「おざなり」とは
「おざなり」とは、その場の思いつきで適当にあしらったり、物事を粗雑に扱うことを指します。努力や計画性を敬遠し、適当に済ませる場合に「おざなりにする」と表現します。
漢字では「御座成」と書きます。また、同意語に「通り一遍」があります。
例文・使い方
仕事をおざなりにする。
おざなりな態度で接する。
事業報告をおざなりに済ませる。
挨拶がおざなりになっている。
類義語
- お茶を濁す
- その場しのぎ
- 一夜漬け
- 行き当たりばったり
対義語
- 手塩にかける
- こだわる
- 丁寧
- 手ぐすねを引く
「なおざり」とは
「なおざり」とは、物事をいい加減にする様や、本気で取り組まないことを指します。心を込めないで対応したり、物事を軽んじる場合に「なおざりにする」と表現します。
漢字では「等閑」と書きます。また、同意語に「ゆるがせ」あります。
例文・使い方
- 遊んでばかりいて学業をなおざりにしてきた。
- 虫の命をなおざりにする。
- A国の環境問題はなおざりにされてきた。
- 約束をなおざりにしてはいけない。
類義語
- 蔑ろ(ないがしろ)
- 疎か(おろそか)
- 無頓着(むとんちゃく)
- 度外視(どがいし)
対義語
- 意に介する
- 真剣
- 干渉
- 念入り
「おざなり」と「なおざり」の語源・意味の違い
どちらも「物事をいい加減に扱う」という点では同じ意味ですが、語源は全く別であり、その意味にも微妙な違いがあります。
「なおざり」は平安時代から使われていたそうで、「猶(なほ)去り」が由来であるとされています。「猶」は「そのままの状態」という意味で、「去り」は「去っていく・何もしない」という意味です。つまり、「猶去り」の意味は「何もせずそのままの状態で放っておく」となります。
一方「おざなり」ですが、こちらは江戸時代から使われ始めた言葉で、お座敷や宴会の席で芸妓さんなどが客の顔ぶれによって手を抜いたりする様子を由来としています。そこから転じて、手を抜いていい加減に対応する様子を「御座形(成)」と表現するようになりました。
「なおざり」には「物事にほとんど手をつけず放置する」という意味合いが強く、「おざなり」は「一応手はつけているが、適当にあしらう」という意味合いが強くなります。また、「なおざり」は価値観の相違によって物事を軽視してしまうのに対し、「おざなり」は怠惰や無責任さが背景に見られます。