【経済学】租税の課税原則をわかりやすく解説。

経済学

課税原則と言う言葉を知っていますか?経済学を専攻している学生や、財政について興味がある人は聞き覚えがあると思います。

課税原則は租税を検討する上で非常に重要な概念です。課税原則について知っておくと、所得税や消費税のような、国民が負担している租税の性質を見抜けるようになります。

この記事では課税原則について簡単に解説していきます。

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課税原則

国を運営していくためには当然費用がかかります。政府はこれを租税によって賄います。しかし租税は政府による強制的な金銭の徴収なので、必ず経済主体にダメージを与えます。

このダメージを最小限に抑えるために、租税に与える条件が課税原則です。

課税原則には概ね次の3つが挙げられます。

  • 公平
  • 効率
  • 簡素

一つずつ見ていきましょう。

公平

公平(fairness)とは、能力や状態に応じて適切に対応することです。

租税は公平であることが望ましいとされています。

租税の公平性を判断するための価値基準として経済学で用いられるのが経済力です。

経済力とは一般的に資源をコントロールする能力のことを意味します。その具体的な指標としては「所得」「資産」「消費」などがあげられます。

経済力をもとにした以下の二つの性質を満たすと、その租税は公平であると言えます。

水平的公平性

水平的公平性とは、同じ経済力の人に同額の税金を課すことです。

簡単に言うと、同じ給料の同期には同じ税額が課されるべき、と言うことです。

垂直的公平性

垂直的公平性とは、異なる経済力の人に異なる税額を課すことです。

簡単に言うと、上司と部下では給料に差があるので、高い給料をもらっている上司の方が税負担が大きくなるべき、と言うことです。

ちなみに公平は平等とは違う概念なので注意が必要です。

効率

効率(efficiency)とは、資源を無駄なく配分できているかということです。

租税は強制力を持つために、個人や企業の経済活動に影響を及ぼします。すると彼らの意思決定を歪ませてしまい、市場メカニズムが上手く機能しなくなってしまうのです。

市場メカニズムが機能しないということは、効率的な資源配分が達成できないということを意味します。つまり資源配分に無駄が生じてしまい、市場全体の満足が減ってしまうのです。この損失のことを経済学用語では死荷重と呼びます。

死荷重
  • 赤が消費者余剰
  • 緑が政府収入
  • 青が生産者余剰
  • 灰色が死荷重

価格t円の課税をした時、供給曲線は上へシフトします。すると均衡がE0からE1に移動し、灰色の部分(死荷重)が総余剰から失われます。

租税は死荷重を小さくするために(効率的な資源配分を目指すために)、できるだけ各経済主体の意思決定を歪ませないようにする必要があるのです。

「各経済主体の意思決定を歪ませない」と言う点に注目して、「効率」の代わりに「中立」を課税原則の一つとすることもあります。

簡素

簡素とは、シンプルでわかりやすいことです。

租税の徴収には徴税費用というコストが発生します。これは政府側と国民側の両方に発生します。

例えば税務署の人件費や設備費、納税するための交通費や郵送費、納税に割いていた時間の機会費用などが挙げられます。

税制が複雑であればあるほどこの徴収費用はかかってしまうので、租税には簡素さが求められるのです。

まとめ

要点
  • 課税原則とは「公平・効率・簡素」のこと。
  • 公平は能力や状態に応じて適切に対応すること。
  • 効率は資源を無駄なく配分すること。
  • 簡素はシンプルでわかりやすいこと。

課税原則を理解すれば各種租税の性質を検討することができます。

例えば消費税は課税原則的にはかなり理にかなっている租税です。消費税は消費が多い人ほど負担が大きく(公平)、一部ではなく全ての財にかかっているので死荷重が小さく(効率)、価格の一定の割合というわかりやすさを持ち合わせています(簡素)。(軽減税率は考慮していません)

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