経済学の研究分野は多岐に渡りますが、その多くの根本にあるのが「経済学の十大原理」です。
この記事では「経済学の十大原理」について簡単に解説していきます。
第1原理 人々はトレードオフに直面している
トレードオフとは、何かを得ると別の何かを失ってしまう相反する関係のことです。
人々は常にこのトレードオフに直面しています。
1日24時間という限られた時間の中で、何時間眠り、何時間運動し、何時間スマホを見て、何時間本を読むのか。あれもやりたいこれもやりたいでは時間が足りないので、何をして何を諦めるのか選択をしなければいけません。
テレビで見たい番組が被ったときにどちらを見るのか。いちご味のかき氷とブルーハワイのかき氷のどちらを食べるのか。
全て欲しい、全て叶えたいという欲求は、時間的、金銭的な縛りによって制限されています。人々は常に選択をしなければいけません。
第2原理 あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である
人々はトレードオフに直面しているため、何かを得るためには何かを諦めなければいけません。この代償のことを機会費用と呼びます。
スマホを3時間いじることは一見タダで何の費用もかかってないように見えますが、実際は違います。
スマホをいじらずに時給1000円のアルバイトをしていれば3000円の給料を得れたはずなので、スマホをいじる行為には3000円の機会費用が発生しているのです。
かき氷かアイスのどちらかを選んで食べたとしても、もう片方を食べることで得れたはずの効用が機会費用として発生します。
選択は必ず機会費用を伴うのです。
第3原理 合理的な人は限界原理に基づいて考える
経済学では人は合理的であると想定しています。
合理的な人は効用を最大化するために最善を尽くし、その選択は限界原理に基づいているのです。
スマホを永久に見るのか二度と触らないのかではなく、後1時間いじるかどうか。裸になるのか全身隈なく覆うのかではなく、後1枚シャツを羽織るかどうか。
0か100かではなく、もっと細かい変化について人々は考えています。
第4原理 人々はさまざまなインセンティブに反応する
インセンティブとは人を突き動かす動機、誘因のことです。
ある行動をするにはどれくらいの費用がかかって、どれくらいの見返りがあるのか。それらを比較して意思決定をすることは、インセンティブに反応していることを意味します。
クロワッサンを買うときに、美味しいから買うのか、安いから買うのか、誰かに勧められたから買うのか、匂いに釣られたから買うのか、それ以外売り切れていたから買うのか。
パン屋に入った人はさまざまなインセンティブに反応してクロワッサンを買うことになります。
第5原理 交易は全ての人々をより豊かにする
交易のメリットは、互いに協力し合うことで、足りないものを補えることです。
A国は農業が得意だけど加工技術はない。B国は食品加工は得意だけど原材料がない。それなら貿易をすることによって全体の利益を最大化することができます。
もっと身近な例でも、電子機器類、着ている服、食べているご飯、住んでいる家、それらのほとんどは誰かが作ってくれたものです。交易(取引)をしないのであれば、全て自分で作らなければいけません。
役割分担することによって、自分がやるべきことに集中でき、互いの生産性が向上するのです。
第6原理 通常、市場は経済活動を組織する良策である
市場経済では、各家庭が何をどれだけ消費するかを決定し、各企業が何をどれだけ生産するかを決定している。
それぞれが自己の利益だけを追求して意思決定をすることによって、経済全体の厚生は高まります。
社会のことを考えていない利己的な意思決定のはずですが、全ての経済主体が同じように意思決定することによって、釣り合いが取れるようになっているのです。
この市場の調整機能のことを、俗に「神の見えざる手」と呼びます。
第7原理 政府が市場のもたらす成果を改善できることもある
神の見えざる手によって市場は上手くいきますが、そのためには市場を監視する存在が必要であり、それが政府です。
政府の役割の一つは、各個人の所有権や著作権を保護することです。盗んだり、真似されたりしないようにすることで、人々は安心して財を供給することができます。
他にも「資源配分の効率化」「所得の再分配」「景気の安定化」などがあります。
例えば汚染を顧みずに稼働を続けて利益を伸ばしている工場などは、市場の失敗といえます。政府が介入してルールを整備しなくてはいけません。
第8原理 一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している
生産性(労働者が一人一時間あたりに生産する財・サービスの量)の大小によって、その国の生活水準は決まるとされています。
生産性が高ければ高いほど生活水準は高くなり、低ければ低いほど生活水準も低くなります。
生産性の違いがそのまま各国の格差となって現れるのです。
第9原理 政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
紙幣を大量に発行すると紙幣の価値が下がり、物価が上昇します。経済全体で価格が上昇することをインフレーションと呼びます。
インフレはソシャゲなどでも聞いたことがあると思います。その場合はアップデートを重ねるごとに強いキャラクターやカードを登場させ、どんどん環境が高速化していったりすることなど指します。
インフレーションの反対の言葉はデフレーションです。
デフレーションは経済全体で財やサービスの価格が減少することを指します。
第10原理 社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している
インフレについては、短期的に見れば経済を活性化させる役割を持つと一般的には認知されています。
インフレと失業の関係 貨幣供給量の増加は消費者の支出を促し、財への需要の増加に繋がります。 需要の増加に伴い企業は価格を引き上げていきますが、その過程で雇用を増やして生産量を増やします。 雇用が増加するということは、失業が減少することを意味します。
インフレが進行する代わりに失業が減少しているため、二つはトレードオフの関係にあります。